10月中旬、黒部峡谷と室堂、そして美女平へと抜けるコースをたどりました。快晴という言葉以外に形容のしようのない、まさに快晴でした。黒部ダムは有名なので写真でも何度も見ていましたが、風や陽の光の中で見るのは、いわば体で感じることなので全く別の印象を受けるものです。
J.P.サルトルとS.ボーヴォワールが来日したときに霧雨の降る明治神宮を案内され、この美しさは体験しなければわからないと何度もつぶやいていたそうな。同じことだったのでしょう。
J.P.サルトルとS.ボーヴォワールが来日したときに霧雨の降る明治神宮を案内され、この美しさは体験しなければわからないと何度もつぶやいていたそうな。同じことだったのでしょう。
幸いにダムは放水されていました。水音がまったく聞こえないのは、眼前に見えるのにそれほど距離があるということで、規模の雄大さにうたれます。このダムの工事の困難さは広く喧伝されていますが、初期のころの記録映画では熊が一瞬にして激流に飲まれていくシーンがありました。人をまったく寄せつけない厳しい自然と、それにもかかわらず挑戦する人知との長い厳しい戦いは映画化されるだけのものを持っています。
黒部ダムから室堂へ行くケーブルカーの始発駅まではバスです。それほどの距離ではないもののずっとトンネルの中を走ります。途中、大破砕帯を通ります。映画「黒部の太陽」で、突然、トンネル内に大出水するシーンがありましたがその場所です。
立山連峰の伏流水を抜きながら地層のない岩盤を薬剤で固め、命の上に命を塗り重ねるようにして数センチ単位で進んだであろう部分。バスではほんの短い時間なので想像力が必要なのだと強く思いました。
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