平成20年11月20日木曜日

黒部から室堂へ (その2)

室堂までは地上ケーブルと空中ケーブルを乗りつぎます。これこそ快晴と言うべき、将に快晴。陽の光で目を開けられないほどでした。高度を増していくと一気に眺望が開け、周囲から感嘆の声が上がります。昼近くでもあったので途中下車して、日陰をウロウロと探して昼食。



こういった場所はどこでもそうなのですが記念写真を後日送付する商いがあって、団体客は自分の運命も知らずに屠場につれてこられた鶏のように、華やいで整列します。カメラ係のお兄さんが一万回も繰り返したであろう香気の失せたジョークを感慨もなくしゃべくると、そのつど観光客がどっと沸く。見ていると、その落差のほうがよっぽどおかしい。室堂は混んでいました。なるほど、ここから日本の屋根に向かうのだなと山々を眺めて堪能して来ました。

黒部から室堂へ (その1)

 10月中旬、黒部峡谷と室堂、そして美女平へと抜けるコースをたどりました。快晴という言葉以外に形容のしようのない、まさに快晴でした。黒部ダムは有名なので写真でも何度も見ていましたが、風や陽の光の中で見るのは、いわば体で感じることなので全く別の印象を受けるものです。
 J.P.サルトルとS.ボーヴォワールが来日したときに霧雨の降る明治神宮を案内され、この美しさは体験しなければわからないと何度もつぶやいていたそうな。同じことだったのでしょう。

幸いにダムは放水されていました。水音がまったく聞こえないのは、眼前に見えるのにそれほど距離があるということで、規模の雄大さにうたれます。このダムの工事の困難さは広く喧伝されていますが、初期のころの記録映画では熊が一瞬にして激流に飲まれていくシーンがありました。人をまったく寄せつけない厳しい自然と、それにもかかわらず挑戦する人知との長い厳しい戦いは映画化されるだけのものを持っています。

  黒部ダムから室堂へ行くケーブルカーの始発駅まではバスです。それほどの距離ではないもののずっとトンネルの中を走ります。途中、大破砕帯を通ります。映画「黒部の太陽」で、突然、トンネル内に大出水するシーンがありましたがその場所です。
立山連峰の伏流水を抜きながら地層のない岩盤を薬剤で固め、命の上に命を塗り重ねるようにして数センチ単位で進んだであろう部分。バスではほんの短い時間なので想像力が必要なのだと強く思いました。